studioshopMainBg

 

写真・映像・出力機材の販売、撮影機材、背景素材レンタル、撮影スタジオの設計施工なら銀一株式会社

写真家の作品制作を支える存在として、プリンターは古くから重要な役割を担ってきました。ネガは楽譜、プリントは演奏という名言からも窺い知れるように、プリント制作はその自由度の高さ故、作品に対する深い洞察力と理解力が求められます。また同時に、プリンター個人の感性をいかに作品と融合させるかという命題も含めて非常に繊細な作業を伴ないます。

トウキョウ アトリエ オブ フォトグラフィー代表の松平光弘さんは、9月にP.G.I.で開催された久保田博二氏の写真展「アメリカとビルマ」にプリンターとして参加。それぞれ数点しか現存しない貴重なオリジナルプリントをデジタルデータ化してインクジェットプリントすることで、リプロダクション・プリントを完成させました。これにより、多くの人が久保田氏の作品を手にすることができたのはもちろん、名作と謳われる写真を自分だけの場所に飾ることができるようになったのです。

今回のTipsは、入社以来インクジェットペーパーひと筋? で過ごしてきた映像機材営業本部の山田が、日本ではまだ馴染みの薄いプリンターというお仕事、そしてカタチあるものとしてプリントされた写真の魅力について、松平さんにお話を伺いました。

東京・南青山に事務所を構えるトウキョウ アトリエ オブ フォトグラフィー(以下、トウキョウアトリエ)は、日々の生活の中に「写真を飾ること」をコンセプトとして2006年に設立されました。インクジェットによるファインアートプリント制作から、その作品がインテリアに調和する額装までを手がけるという、従来のプリンターから一歩進んだ提案力とその仕上がりは、各方面より高い評価を得ています。

代表の松平光弘さんはイギリスでのラボ勤務を経て、ゼラチンシルバープリントやプラチナバラジウムプリント制作で名高いザ プリンツに4年間在籍。その後、現在のお仕事をスタートさせています。

取材担当の山田が銀一に入社したのが2003年。当時の最新機種であるエプソンPM-4000PXにイギリス製のインクカートリッジと用紙を組み合わせて、色転びしない高品位なモノクロプリントを試行錯誤しながら提案していた頃からのお付き合いです。今でもそうですが、欧米のファインアートプリント事情に明るい松平さんから現地の情報や市場の感覚などいろいろとアドバイスをいただいています。

■欧米でのファインアートプリント事情について

松平さんによれば「欧米においてアートとしての写真は、必ずしも銀塩のプロセスを経ていなければならないという固定観念はありません」とのこと。伝統を重んじる反面、銀塩での写真制作を数あるプロセスのひとつとして見なすことで、デジタル機材による高品位な制作方法が確立されたようです。確かに当社が輸入・販売しているハーネミューレ社(ドイツ)のインクジェットペーパーは、用途に合わせたきめ細やかなラインナップが特徴です。

■欧米のリプロダクション・プリント文化について

日本では馴染みの薄いリプロダクション・プリントは、ともすれば単なる複製と決めつける方も少なくないかもしれません。欧米ではどのように認知されているのでしょうか?

「インクジェット出力によるリプロダクションは、それ自体ひとつの作品として販売されています。写真はもちろん油絵から水彩画まで、自宅に芸術作品を飾って観賞する習慣のある欧米では、自分の予算内で購入できるリプロダクションを芸術作品として求める人たちがたくさんいます。とくに絵画は一点ものです。本来なら一人の所有者しか楽しむことができませんが、オリジナルを理解して適切なメディア(用紙)に出力して販売することで、多くの人々に作品の素晴らしさを伝えることができるのです

インクジェットプリンタで出力した作品で写真展を開催したり、作品制作を行う写真家が増えている現在、同じ手法で制作されるリプロダクション・プリントのクオリティに異論を挟む余地はないように思えます。

「もちろんその背景には単なる複製にとどまらない品質の高さであったり、エディションが与えられるなどの付加価値もりますが、芸術を愛でる気持ち、または美しいものは平等に与えられるべきという精神が欧米には深く根付いているのかもしれませんね」

※ここでのリプロダクション・プリントとは、アートおよびファインアートの分野におけるハイクオリティな再生産品を指します。保存性の高い顔料インクを搭載したインクジェットプリンタで、インクへの攻撃性を抑えた高品位な用紙を使って出力されるその方式は、フランス語で「吹き付けて着色する」という意味を持つジクレー(Giclee)と呼ばれ、近年もっとも原画に忠実な表現ができる技法とされています。

■久保田博二氏のオリジナルプリントをご覧になって感じたこと

P.G.I.で開催された久保田博二氏の写真展「アメリカとビルマ」は、写真家としてのキャリアをアメリカから始めた氏だからこそ強烈に再発見することになった「アジア人としての自分」という存在に気づかされる瞬間が濃縮された見応えのある内容でした。

「久保田さんがこの作品を撮影された当時、私はまだ産まれていませんでした。しかしその時代の空気感、虚無感は痛切に伝わってきます。同時にこんな大変な時代だったにもかかわらず温かさが伝わってくるところに久保田さんらしさが見える気がします。写真としては光の感覚と構図がとても美しい。当時の久保田さんと私はほぼ同世代なんですが、それを考えるとこの筋の通ったブレのない写真は驚きです」

■久保田博二氏の作品をリプロダクションして感じたこと

それぞれ数点しか現存せず、かつ保存状態が異なるオリジナルプリントからリプロダクション・プリントを制作するのは難しかったのではないでしょうか。

「確かに保存状態や年代により、それぞれプリントの調子が違います。そこで体系的にリプロダクションすると決めた時点で色調はニュートラルブラックに揃えました。また、シャドウ部分の濃度や紙白を含めた中間からハイライトの調子は、銀塩とインクジェットでは微妙に違うんです。オリジナルプリントを元に、それぞれの写真が持つ空気感、温度、音、匂い…。写ってはいないけど久保田さんの写真から受け取った感覚を、見る人に伝えることができるようなプリントを心がけました」

ところで実際のプリント作業はいかがでした?

「業務用のスキャナで取り込んだデータをPhotoshopで調子を整えながらプリントしました。素材が良いので切り抜いて部分的に作り込んだりすることはありませんでしたね。あまりレイヤーをかけて調整しすぎると、オリジナルの持つ写真的な遠近感や立体感が損なわれていく気がするんです」

実際に松平さんが手がけたプリントを拝見して私は驚きを隠せませんでした。オリジナルプリントと松平さんが出力したリプロダクション・プリントを比較すると、確かに素材(紙)、制作方法、経年変化などによる違いがよく分かります。しかし写真として優劣をつけようという気持ちにはなれませんでした。さらにリプロダクション・プリントだけを集めて見ると、その見事な統一感によりいっそう作品に飲み込まれていく自分がいたのです。作者の想い、写真展のコンセプトの理解に努め、話し合いの結果によって生み出されたこの作品の底力を感じずにはいられませんでした。

■リプロダクション・プリントのベースとなったシルバーラグについて

今回のリプロダクション・プリント企画の用紙として採用されたマジックリー・シルバーラグは、久保田氏が所属するマグナムからも正式採用されていることが分かりました。当社が日本での発売を開始してから4年。プロアマ問わず多くの写真家にご愛用いただいているこのインクジェットペーパーの実力は、松平さんの目にどう映っているのでしょうか。

「シルバーラグは、紙にコシがあって紙白もナチュラルで好感が持てます。手にしたときの感触や風合いも含めて銀塩プリントを彷彿とさせる仕上がりは、他のインクジェット用紙とは異なる特徴です。また、コットン100%でしかも蛍光増白剤を使っていないため、インクにも優しく作品制作のベースとして安心して使えるのが魅力ですね。もちろんハーネミューレと共に、当社のプリントサービスでも採用しています」

■心の窓

日々の生活の中に「写真を飾ること」を提案している松平さんのアトリエには、空間に調和しながらもその場を彩るような写真が立てかけられていました。選りすぐったフレームのサンプルを眺めながら、こないだ仕上げたあの写真にはこのフレームが合うなぁ、オーバーマットの色味はこんな感じで、写真の配置と大きさは・・・などと考えていくと楽しくて仕方ありません。

「デジタル写真全盛の時代ですが、ご自身の作品はモニタで鑑賞するだけでなく、ぜひプリントしてもらいたいですね。気に入った写真は手にとって眺めたり、好きな場所に飾るといっそう愛着がわくと思います。人って多分にアナログ的ですから」

写真のプリントや額装を依頼することに敷居の高さを感じる人もいるかもしれません。しかし、世界に一つだけの作品を仕上げようとするとき、経験豊かな松平さんのようなプロに相談することで、写真はよりいっそうの輝きを放ちながらその場所に溶け込むのではないでしょうか。

「絵は家の窓、という言葉があります。気分に合わせて好きな絵を好きな場所に飾ることって贅沢に感じますが、オリジナルにこだわらなければ実はだれにでもできることなんです。写真にも同じことが言えるのではないでしょうか。高名な写真家の作品だけでなく、ご自身が撮影された作品でもいいし、家族の何気ない表情を集めた写真でもいいし・・・。もしかしたら、写真は家の窓というよりも心の窓なのかもしれませんね。そんな皆さんの作品制作のお手伝いができればこれほど幸せなことはありません」

 

この冬休み。愛娘の写真を撮りまくって松平さんにプリントと額装をお願いしようと心に決めた山田なのでした。

松平光弘さんが主催するトウキョウ アトリエ オブ フォトグラフィーのHPはこちら

プリントのご相談、額装のご相談などお気軽にどうぞ 現 アフロ アトリエwww.aflo.com/atelier
Top